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ギャラリーカフェ人と木



田があり、畑が広がり、鳥は鳴き、雲は流れ、
そしてカフェがある。

ギャラリーカフェ人と木
森田雄己

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一風変わった
カフェをご紹介しよう。


田んぼと畑がずーっと広がっていた。
はるか向こうに山の稜線がうねうねと続いている。
大きく広い場所に立っていた。
頭の上には青空が高く伸び上がり、白い雲がぽつぽつと浮かんでいる。
気持ちがふっと緩んで、大きな欠伸がひとつ出た。
のどかだ。
こんな所があるんだなあともう一度あたりを見回した。
「ギャラリーカフェ人と木」を捜してこのあたりまで来た。
だが、それらしき建物がない。こんな所にカフェなんてあるのか。そう思いはじめていた。
ふと見ると一本の旗竿に白い旗が風に揺れていた。
そこに墨文字で「人と木」と書かれてある。ただそれだけ。
ココともアチラとも、右とも左とも書いていない。矢印のようなものもない。

振り返ると大きな日本家屋があり、
門の前に茜色の暖簾がかかっていた。
それが目印だとホームページに書いてあったことを
思い出した。
両開きのガラス戸をがらがらと開けると、
その向こうにこれも両開きの襖がある。
上り框で履物を脱いで、襖をこれまたするすると開けると
「ギャラリーカフェ人と木」の店内ということになる。
畳敷き二十畳ほどの広間に和机と背の低いテーブルがレイアウトされている。

白いご飯である。
これが美味しいのだ、実に。


「白いご飯が好きなんですよ」
オーナーである森田雄己さんはそう言った。
だからランチセットの中心は白ご飯なのだそうだ。
当然メインディッシュにも力を注いでいるが、主役はあくまでも白いご飯。
これは意外だった。
ご飯を売りにするにしても、五穀米とか十六穀米、赤米や黒米の古代米、ちょっと前なら玄米ご飯と、
カフェめしのオリジナリティを打ち出そうとすれば、そんなところが定番どころなのだが。
なんの変哲もない。そう言われたこともある。
もっと特色を出せばいいのにと忠告してくれる親切な人もいた。
だが白ご飯なのである。

自慢の白ご飯を口に運んだ。
ころりと舌の上にのる。あれっと思った。粘つきはあまりなく、米の粒立ちの方が勝っているように感じられた。
よく噛んで食べなさいとは、よく言われることだ。
少なくとも三十回ほど。そうすると食べ物はほどよくこなれ、大量に分泌される唾液と混じって消化に良いのだと。
またよく噛むことによって食欲中枢が刺激され、ほどよいところで満腹感をもたらすらしい。
そしてもうひとつ。よく噛めばもっと美味しくなるということだ。
ころりとした感触をほどいていく様にもぐもぐと口を動かしているうちに、白ご飯の中からじんわりと甘みが広がっていった。
かすかな香ばしささえ感じられて、なるほどこういうことかと頷かされる。

膝をくずして
頬杖ついて・・・。


白いご飯に負けず劣らずのメインデッシュをいただいて、
食後のコーヒーがやって来る頃には、もうすっかり寛いでいる。
和机に頬杖をついてガラス障子越しに中庭の景色を眺めていると、ゆるゆると自分がほどけていくのが感じられる。
人通りも稀な田んぼと畑が広がる風景。
虫が遠くで低く静かに鳴いていて、それがまるで通奏低音のように聞こえてくる。
ああ、これは・・・と思った。
昔々のその昔、まだ少年だった頃、祖父母の家での情景を思い出したのだ。
正午を少し回った時刻の、白い光と黒々とした影とのコントラストを薄暗い部屋の中からぼんやり眺めていた、少しずつ午睡へと誘われていく時間。
ああ、のんびりするなあ・・・。
大きく背伸びをして、そんな言葉を口にしたくなるようなゆるやかさががここにはある。
人と木がまだそんなに遠く離れていなかった頃には、それは日常の中の当たり前だっただろうが、
もう今はないその遠いこだまを聞こうとするように、人はこのカフェに集まってくるのかもしれない。

寛ぐとか安らぐとか、そんな漢字混じりではなくて、のんびり、ゆるゆるとする。
水を頻繁にかえに行ったり、客の帰ったテーブルをそそくさと片付けにかかったりすると、せっかくのその時間を壊してしまう。
だからスタッフの人たちはちょうどいい間合いをはかっていたりする。ちょっとした心遣いだ。
だが自分たちが提供しようとしているものに対する自覚がなければ、できないことでもある。
色々なカフェで、色々なランチタイムがあるけれど、
「ギャラリーカフェ人と木」のそれはどうも一味も二味も違っているようなのだ。

営業時間10:00〜18:00
定休日土曜日
住所京都府木津川市相楽城の堀26 (地図)  駐車場あり
電話番号0774-71-0305
ホームページhttp://www.cafe-hitotoki.com/
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