TOPお店と人物の取材記事イーハトーヴSORA デリカテッセン&カフェ

イーハトーヴSORA デリカテッセン&カフェ



理想郷は、実はすぐそばにあるのかもしれない。

イーハトーヴSORA デリカテッセン&カフェ
井西正義(所長)

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たんなるお洒落な
カフェだと思っていた。


「イーハトーヴ」。
宮沢賢治が彼の心の中にある理想郷につけた名だ。
それと同じ名前を持つ店が帝塚山にあると聞いて
訪ねてみようと思った。
さて、そこはどんな理想郷なのだろうと興味をもった。

帝塚山南の大きなバスターミナルのそばに、そのイーハトーヴはあった。正確にはデリカテッセン イーハトーヴSORA。
食品の販売とカフェがひとつになったお店だ。白壁が青い空に引き立ってきらきら輝いている。
だが中に入ると打って変わって黒を基調としたシックな装いを見せるのだ。
さすがに高級住宅街にあるお店だ。
実に趣味がいい。

冷蔵ケースにはサンドイッチやパスタなど
厨房で作られたばかりの商品が並び、ディスプレイ台には
レトルトカレー各種や菓子類にパン、それに蜂蜜やジャム、
醤油なども置かれてある。
それぞれの商品には、手書きのワンコメントが記された札がつけられたりしている。
だがそれらをよく見ると、見知ったメーカーのものはない。
レトルトカレーを手にとって裏書を見た。製造者の欄に、
「社会福祉法人青葉仁会 デリカテッセン イーハトーヴ」とある。
作っているのは冷蔵ケースの中の惣菜やカフェで出す食事だけかと思っていたが、どうもそれだけではないようだった。

ここでは障がいのある人たちが、
いきいきと働いている。


イーハトーヴSORAの経営母体は、社会福祉法人青葉仁会である。
店の外観や洒落た内装の様子からはちょっと想像しがたいが、社会福祉法人とあるからには、何らかの障がいがある人たちが関わっているのだろうか。
「青葉仁会では、様々な障がいのある方たちがいきいきと働けるように、色々なお手伝いをしています。その実践の場のひとつとしてイーハトーヴSORAがあるというわけなんです」
青葉仁会の職員で、ここの責任者でもある井西さんは陳列されているレトルトカレーのひとつを取り上げた。
「これはここの二階の工房で製造したものです。肉や野菜を切り、大鍋のなかでルーをかき混ぜ、
パックに入れて箱詰めする。最初から最後までを障がいのある人たちと職員とが一緒になって製造しています」

食品を製造するとなれば、火は使うし刃物も使う。
一貫生産であるからには作業員同士の連携も必要になる。
井西さんはこともなげに言うけれど、これはすごく大変なことなのではないか。
「できることを、やってもらうようにしています。
障がいの程度もそれぞれですから、工程を細かく分けて分担してもらっています。
また作った商品は一階のショップで売っていますので、
自分たちの作業の結果が、どのような形で社会に出て行くのかを目にすることができるわけです。
買ってくださるお客さんの顔を見れば責任感も芽生えますし、仕事を通じて自分の存在意義についても実感できる。
こういうことが一人ひとりの成長に大きな意味を持ってくるんですね」

特別なことではなく、
日常の中のひとこまとして。


一階の奥に厨房があって、店で販売する惣菜一式を作っている。
同時にカフェで出すドリンク類、パスタやカレー、それに人気の週がわりランチも調理される。
ここでも障がいのある人と職員とがタッグを組んで働いているのだ。
そして売り場にも別のタッグチームがいる。
売り場に立つとなればお客との会話も必要になってくるが、
ほんの少したどたどしいにしても、お客を迎える言葉はいたって明朗だ。
何かあれば職員がさっとフォローする。なかなかのチームワークだ。
カフェの注文も障がいのある人が聞きにくる。メモになにやら書き込んで、間もなく頼んだものがやってくる。
ほかの店と何もかわらない。

「障がいがあるからといって言い訳はしないし、
特別扱いも求めません。
社会の一員なのだから当然のことだと思います。
ですから店の作りもお客様を迎えるにふさわしいものにしようとしていますし、扱う商品もサービスも一流を目指しています。
地域の人たちに彼らの仕事や役割を知っていただくためにも
必要なことだと思っています」
声高に主張はしない。卑屈になることもない。
自分たちに出来ることをひとつひとつ積み上げていき、そうして社会の中での居場所を自分たちの手で作っていく。
そういう人たちに出会った。
そこは「イーハトーヴ」と名づけられた場所だった。
なるほどねと頷かされた。

営業時間10:00〜19:00
定休日年末年始
住所奈良市帝塚山南4-11-14 (地図)  駐車場あり
電話番号0742-95-7227
ホームページhttp://www.aohani.com/
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