TOPお店と人物の取材記事間工作舎 小笠原絵理/ツキデ工務店 田口英樹

間工作舎 小笠原絵理/ツキデ工務店 田口英樹



家を建てる気になったら、考えてみるべきこと。

間工作舎/一級建築士事務所 小笠原絵理
ツキデ工務店 田口英樹 

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家を建てようと
思ったわけではないのだが・・・。


人生の中で一番高額な買い物とはなんだろうと考えてみた。
やっぱり家だろうね。
家を建てるのが一番高額な買い物だなあ。
小国の国家予算並のダイヤモンドを買うレディはいるだろうし、億単位のスーパーカーを購入するリッチマンもいるだろう。
だが普通の人にとって一番高額な買い物はやはり家だ。
週末になればマンションや一戸建てのチラシが何枚も折り込まれ、そこに描かれてある図面とその横の価格を眺めながら、目を輝かしたり、ため息をついたりしている人たちも多いのではないだろうか。
大きい部屋と小さいのとが組み合わされて、その数が多ければ概ね価格は高い方に傾き、少ないとお手頃なところに近づいていく。お手ごろとは言っても、ン千万円はする。そんなお金を持っている人もそういないから、貸していただく算段を取りながら、はてさてどんな我が家にしようかとチラシやネットを見たり、不動産屋へ行き、内覧会に出かけ、希望と失望の間を行ったり来たりしながらあれこれ迷うわけだ。

だが待てよ。
予算に限りがあるから妥協は致し方ないとしても、生涯最高とも言うべきお金を用意しているのに、
なんで大衆食堂のメニューを眺めながらあれこれ迷っているのと同じようなことをしているのだろう。
五百円辺りで熾烈な攻防をしているランチならいざしらず、少なくともン千万円ですよ、ン千万円。
それだけのお金を用意しながら、なんで出来合いのものの中から選ばなければならないのだろう。
あれ?ちょっと変じゃないかと、
今更ながらに思ったわけなのだ。

建築家さんに
色々と聞いてみた。


注文建築というものがあるのは知っていた。
ただそれは豪邸とか邸宅とかお屋敷と呼ばれる建物を建てる際に考えることで、普通な家を建てようと思っている者には縁のないものだと思っていた。ところがそうでもないようなのだ。
土地は別として、建物だけで最低でも二千五百から三千万円ほどあれば、注文建築も十分に視野に入ってくるのだという。それでも相当な金額だが、億に近いところか、それ以上かと思っていた記者にとっては、へえ、そーなんですかぁ・・という感じだった。 それぐらいのお金の用意があると、出来合いのメニューの中から選ばずとも、建築家と一緒に自分の生活と趣味にあった家を作ることが可能になる。
生涯最高額の買い物だもの、そっちの方がはるかに楽しいじゃないですか。

とまあ、金もないのに想像しただけで浮かれ騒ぎかける記者を、建築家の小笠原絵理さんは「まあまあ」とおさえにかかった。
「自分たちの夢をそのまま形にするということでは注文建築はよい選択だと思います。ただその夢がどういうものなのか、そこのところが曖昧だと、形にしていくのは難しいものになってしまいます」
広くなくてもいいから楽しく料理の出来るキッチンが欲しいとか、家族が集えるスペースが欲しい、ゆっくり読書の出来る場所は欲しいなどというところからまずは始めるにしても、願望ばかりを並べ立てていてもそれが形になっていくわけではない。
「色々なご希望をお聞きしたうえで、それを目に見えるものにするためにプランや模型、スケッチなどでご提案していきます」
ただあんなふうにしたいや、こんなふうがいいなどと言っているだけでは話は迷走するばかり。その時になって始めて、いったい自分たちの夢は本当のところどんなものなんだろうという問いが生まれるのだ。
「最初から夢を具体的に思い描ける人なんてまずいません。話をし、カタチにして、キャッチボールを重ねることで、どんな暮らしをしたいのか、どんな家をつくりたいのかということが見えてくるようになるんです」
話し合うこと。それも一度や二度ではなく、何ヶ月も、半年近くも色々と話し合う。家の設計だけでなく、家族のこと、仕事や家事のこと、将来への展望など様々なことを。それがいい家を建てるための一番重要な点だと小笠原さんは言う。
夢は最初から人の心の中にあるのではなくて、色々な思いをくっつけながら、あちらを削いだり、こちらを膨らませたりして建築家と一緒に作り上げていくもの。そういうもののようだ。となると、建築家とは共に夢を作り上げていく同志みたいな関係というようなことにもなる。
「そうですね、そういうふうになれればいいですね」と小笠原さんが微笑んだ。

工務店の人に
あれこれ尋ねてみた。


そんな経過を辿って設計図は出来上がる。
さて次は実際に家を建てる番だ。夢が本当に形になっていくのだ。そこで必要になってくるのがもう一人の仲間。そう、大工さん。今風に言えば工務店だ。
彼らはたんなる設計図に基づいて忠実に動く下請けさんではない。彼らこそがあなたの夢を実現する長いレースの最終ランナーであり、二次元の図面を三次元の空間に打ち立てる者たちだ。
「建築家の意図を十分に理解することは当然ですが、予算と時間という限られたものの中で最善をつくしていくことが求められます。建築中には色々な問題が出てきます。それを施主さんと相談しながら解決していく。当初の方針を変えなければならないようなこともありますが、そういうときにも施主さんの思いはそのままに、別の形を提案するというような柔軟な姿勢も必要になります」
小笠原さんと組むことも多いというツキデ工務店の田口英樹さんはそう語る。
田口さんもまた小笠原さんと同じように、話し合うということの重要性を強調した。
「だから時間はかかりますね。ですがこれから何十年も住み続ける家なんですから、最初にやはりじっくりと時間をかける方がいいと思うんですよ」

手間ひまとコストをかけずに、そこそこなものをお手軽にご提供というような時代の中で、小笠原さんや田口さんの目指していることはその流れとは逆のようにも見える。
だが人にとって一生の買い物にもなりそうなものに対して、半端な気持ちで対応することは出来ないというのも正直なところなのかもしれない。
「家は建てたら終わりってことにはならないんです。馴染むまでにはそれなりの微調整は必要ですし、住みはじめれば当初は思ってもみなかった不都合が出てきたり、家族の構成が変って増改築することもあります。メンテナンスも必要です。だから施主さんとは長いお付き合いになるんですよ」

世の中には買ったその日から古びていくものと、買ったその日から成熟していくものがある。
家を建てるということは、夢という土壌の上に植えられた一本の苗木を、あなたと建築家と工務店の人たちとで長い時間をかけて共に育んでいく、そんなことのようにも思えてくる。
もしそうなのだとしたら、生涯最高の額を支払う価値もあるというものではないだろうか。

小笠原絵理 間工作舎 大阪府豊中市南桜塚2-4-14 06-6856-4677 http://www.tcct.zaq.ne.jp/kan/
田口英樹 ツキデ工務店 京都府宇治市宇治野神94-10 0774-21-2611 http://tukide.jp
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