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漢方 すずらん薬局



お話をよく聞くことが、癒しの第一歩なんです。

漢方 すずらん薬局 松井啓子

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大きな木のテーブルが
あなたを待っています。


すずらん薬局に一歩入ると、カフェにでもありそうな大きな木のテーブルが目に入る。
少し低くてゆったりとしていて、添えられた木の椅子も座りやすそうだ。
オーナーであり薬剤師でもある松井啓子さんが、そのテーブルでお客さんとなにやら話し込んでいる。
お茶しているわけではない。相談にのっているのだ。
尻休めみたいな椅子に座って、ガラスカウンターのこちらとあちらで事務的に何やら話しているというのが薬局での風景のように思っていたから、
そう広くもない店内になぜそんな木のテーブルがあるのかと不思議に思った。
まあどうぞと言われてそのテーブルで取材が始まったのだが、時間が進むうちにその疑問は解けた。

話しやすいのだ。
いや記者の場合は、話が聞きやすいと言うべきか。
両手をテーブルについて体を前に乗り出したり、えー、それはどうなんですと体を椅子の背に預けてみたり、足を右とか左に組み替えて、ほんの少しの間を取ったり、どこかのカフェであっという間の数時間を楽しむように、取材は進んでいった。
「漢方にとって、まずお客さんの話をうかがうことがとても大事なんです」
だからこのテーブルを置いているとは松井さんは言わなかった。言わなくても、それは十分にわかった。

このテーブルの前で、
あなたのこと、あなたの症状、
あなたの思いを語ってください。


当然のことながらここにやって来る人たちは、どこかに病を抱えている。
もちろん彼らに医学の知識はそう無いから系統だって分かりやすく自分の症状を語ることはできない。
問われて語りだし、じっと耳を傾けてくれることに促されて言葉をつないでゆくけれど、どこかで言葉が詰まり、ふと気がつくと、なんだか泣き言ばかりを連ねているのではないかと思いだして、ああこれではいかんと焦ったりする。
そんな時に体をもぞもぞと動かして、足を組み替え、宙に眼をさ迷わせながら言葉を少しずつかき集め、
問いたげに見つめる松井さんにもう一度語りはじめる。
カウンター越しの事務的な応対ではこうはいかないだろうなと、そう思ったわけなのだ。

二時間待ちの十分診療。それが三時間だったか、五分だったかははっきり覚えていないが、大学病院での患者が耐えねばならない時間と与えられる時間だ。
町医者ではさすがにこんなことはないが、交わす言葉は「どうしました」「熱があるようなんです」「診てみましょう」。そしてしばらく後に、「お薬を出しておきます」の4フレーズ。
時に「ありがとうございます」という言葉がつく場合もある。
その程度のやり取りなら患者には背もたれも無い丸椅子で十分だ。
寛がれても困るだろう。
だが漢方の場合はこれではお話にならない。
問診こそが命。まずは十分に語ってもらい、その後にいちいち質問を加えて、問題のありかを探っていく。
質問に十分に答えてもらうためには、リラックスして自分自身を開放してもらわなければならない。
だから必然的にこんな大きなテーブルも必要になるというわけなのだ。

いつかこのテーブルで
お茶を飲みながら談笑する日が来るかもしれません。


松井さんは必要あって客の話を聞く。
だが客の側からすれば、色々と聞いてくれることが大きな励みになっていたりする。
あちらの病院、こちらの病院で不調を訴えてはみても、言葉よりはまずは診察ということで、こちらの不定愁訴は棚の上に置き去りにされたままの日々を過ごしてきた者にとって、自分の言葉に耳を傾けてくれる聞き手の存在がどれほどのものか。
癒しの第一歩は言葉のやり取りなのだ。
言葉が行き交うことによって、一方に確信が生まれ、もう一方に信頼が生まれる。
処方される薬も、その信頼があればこそのものだ。
漢方の薬は、対症療法の薬のような即効性があまりない。体の根本的な治療を目指す薬は、じっくりと時間をかけて効いてくる。
だが「すぐ効く」に慣れてしまった者にとっては、その時間がもどかしい。
ええ?この薬、大丈夫なんかいな。
そんなふうに思ってしまえば、効くものも効かなくなってしまう。
だからこそ十分な相互理解が必要なのだ。

私事だが、右目の奥に鈍痛がずっとある。
嵩じてくると肩甲骨の辺りにじくじくと痛みが現れる。
就職してからのことだから、もう三十年以上。眼科には何度か通ったけれど、原因不明で診療費だけが消えていった。
取材の後で、この右目の痛みについて聞いてみた。
なんか自分の目ではないような違和感があります。
するとこういう感じはありますか、ああいうことはありますかと質問が来る。いちいち思い当たる節があり、それに勇気づけられて、抱えていた諸々をテーブルの上にどさりと置いた。
諦めかけていた心にぽっと火が灯る。
体の凝りと血の流れを改善するためにラジオ体操を勧められた。これがいいそうなのだ。それに目に良いとされる漢方薬をいま飲んでいる。
まずは体質の改善を目指し、それを補うために薬も飲む。
薬頼みではなく、自らの治癒力を覚醒させることが大事なのだということらしい。
三十年以上こじれて捩れたわが持病が、さてどうなるのか。
じっくりと時間をかけてその答えを求めているところだ。

営業時間9:00〜18:00
定休日日・祝
住所京都府木津川市相楽高下42-9   (地図) 駐車場あり
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