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重ね煮居酒屋たからの家



ならやま大通り沿いの
赤い壁が印象的な居酒屋さん


重ね煮居酒屋たからの家
戸練 宝

作るのが好きで、振舞うのがもっと好きで、
それでこの店をはじめました。


初めて人に料理を振舞ったのは、小学三年生の時だった。
それも全くの創作料理。正月開けのこと、
食べ切れず残った餅を、そのまま焼いて食べるのも
もう飽きたと眺めているうちにぱっとひらめいた。
ピザみたいにできないか。
チーズとベーコンを載せて焼くととてもうまかった。
家族に振舞うと大好評だったという。


 戸練 宝氏(とねりたから、と読む)。
今回の取材先である「たからの家」の主の
幼き頃のエピソードだ。
中学生の時には、父親と一緒に魚を丸ごと一本さばき、
寿司を握って家族みんなで食べたこともある。
大人になってからも月に何度かは悪友たちを集めて、
食材を調達させ、それらを自ら料理してみんなで
楽しんだ。
根っから料理をすることが好きなようだ。

そして食べる人の喜ぶ顔を見るのも。まるで料理人になるために生まれてきたようではないか。
「天職」という言葉が思い浮かんだ。幸せな人だと思った。

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「重ね煮」。この言葉に重ねた思いを
知ってもらえたら、すごく嬉しい。


お店の看板に「重ね煮居酒屋」とある。
しかも「重ね煮」という言葉は、強調するように
朱文字で書かれてある。
重ね煮とはどのようなものかたずねてみた。
「鍋に何種類かの野菜を敷きつめて、
水を一滴も加えずに蒸し煮するんです。
栄養分をできるだけ逃がさず、
野菜の旨みを十分に引き出す調理法です」
「えっ、野菜だけ?鶏とか魚とかは入らないんですか
「そう、野菜だけ」と、戸練さんはきっぱりと言った。
野菜料理をメインに押し立てる居酒屋さんはかなり珍しい。
普通は魚介類や肉類が看板料理になっている。

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「重ね煮がメインってわけじゃありません。
大和肉鶏や各地から取り寄せた魚がもちろん
メインなんですが、それらに添えたり一緒に
調理するものに、うちでは重ね煮を使うんです。
メインの魚や肉を引き立たせる名脇役なんですよ、
重ね煮は」
重ね煮なら子供たちは喜んで食べるそうだ。
子供は野菜が嫌いなわけではなく、どうも調理の仕方に
問題があったのではと思わせるエピソードだ。

「食材が持っている本来の旨みを、上手に引き出してやればもっとおいしく、もっとたくさん
食べてもらえる。それって魚や肉の料理にも当てはまることですよね」
なるほど、その考え方のひとつの姿が重ね煮にあるということらしい。
調理の仕方が重要だとしても、その前に食材がまずは良くなくてはならない。
だから戸練さんは旬のものを中心にメニューを考えている。
せっかく四季のある日本に住んでいるのだから、その季節、季節を食の世界でも
思い切り楽しもうよということなのだ。旬のものは美味しいし、体にもいい。
そこに美酒が加われば、至福の時間が過ごせるというものだ。

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ああ美味しかった、楽しかった!
そう言ってもらえれば本望です。


うちは普通の居酒屋ですよ、と戸練さんは言う。
見ると、はっぴの背中に
「まいどおおきに!言える事に日々感謝!」とある。
帰り際のお客さんの満足そうな顔を見ると、
自然にこの言葉が出てくる。
「この一言を言えるのは、お客様が来て楽しんで
帰って頂けた証であり、それが私の幸せでもあるんです」
だからテーブルに並ぶメニューに丹精をこめる。
別に理念とか理想とか主義とかがあるからではなく、
お客に食を供するかぎりそれは当然のことなのだという思いからだ。
「食材がどうの、旬がどうのって語り過ぎるとお酒がまずくなってしまうし、
語らないと一緒くたにされてしまう。そのへんが難しいですよね」
最後にそうぽつりと戸練さんはつぶやいた。
分かってくれれば嬉しいし、その辺のことを知らなくても、
おいしいと思ってくれればそれでいい。
でももしあなたが重ね煮というものに興味をもったなら、主にたずねてみればいい。
とうとうと語りはじめて、つい包丁を持つ手が止まってしまうかもしれないけれど・・・。

営業時間ランチタイム 11:30−15:00(完全予約制)4名様以上/お一人様2,000円(税別)
夜のおもてなし 17:00−0:00(ラストオーダー23:30)
定休日火曜日
住所奈良市右京3−2−5 (地図
電話番号0742-72-0003
ホームページhttp://www.takaranoie.com/
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