TOPお店と人物の取材記事とんぼ玉作家 竹内大祐

とんぼ玉作家 竹内大祐



「とんぼ玉」というものを、見に行った。

とんぼ玉作家・竹内硝子製作所
竹内大祐

rune2

新しいものに出会った。
すごく楽しい経験だった。


その小さな透明な玉を手の平に載せて
覗き込んでみてほしい。驚くはずだ。
その精緻に作りこまれた造形に。
微小な立体庭園が中空に浮かんでいるようなのがある。
今まさに水面に浮かび上がろうとする水中花の、
その一瞬を切り取ったようなものもある。
未知の生命体の細胞分裂かと思わせるようなものさえあった。
とんぼ玉。
まるで子供のお遊戯の道具のような名前をもつガラスの球体に対する認識は簡単に覆った。

人に紹介されてとんぼ玉作家の竹内大祐さんに
会いに行った。先入観があった。
なにかおみやげ物屋に並んでいる民芸品のようなものなのだろうと思っていた。
色つきのガラス玉程度ぐらいに。
だが竹内さんがひょいと摘み上げて見せてくれた作品に
目が吸いつけられた。
小さな球体のその中に、もうひとつの世界があった。
球体をゆっくりと廻してみると、さらに世界が細やかに展開していく。口をあんぐりと開けてしばらく見入っていた。

小さいからこそ
広がる世界があるようだ。


大きさはラムネの中に入っているビー玉ぐらい。
手から零れ落ちてしまえば、捜すのに苦労しそうな感じだった。
そんな小さな球体の中に精緻な世界が作りこまれている。
どうやって作るんです?
こうやるんですと、作ってみせてくれる。
ガラスでできた細長い棒をガスバーナーで炙った。
灼熱してどろりとガラスが溶けはじめる。
それをもう片方に持った鉄製の棒に巻きつけて、くるくると回し、そして色々と手技が駆使されて・・・・。
しばらくすると出来上がった。
真っ赤に熱せられていた球体が急激に冷めていき、深い海の底の青に変わっていく様を見た。
もちろんこれはとんぼ玉の作り方の基本を示すためのもので、
くるくる回してほら出来上がりというふうな簡単な作業で竹内作品が作られているわけではない。


「でも表面にいろんな色の流れ紋を描くようなものは、素人の人でもちゃんと教えてあげれば15分ほどで作れますよ」
とんぼ玉作り入門への敷居は低いということなのだろうが、
彼の作品を見てみるとその奥行きと深さは相当なものだと思わされる。
もう少し大きければ、もっと作りやすいんでしょうけどね、といらぬことを言ってみた。
「いや、小さいことに意味があるんです」
小さな玉の中に驚くほど複雑で多彩な世界が作りこまれている。その落差が人の目を惹きつける。そういうことなのだろうか。だがそれでは米粒に極小の文字を書き連ねるというアトラクションと大差ない。

美しいものは、
ほんの一瞬だけ人を詩人にする(・・かも)。


女は世界そのものの美しさを堪能し尽そうとし、
男は世界そのものの成り立ちを探求したいと思う。
とんぼ玉作家は両性具有の者のように極小の世界の美しさを求めて、想像を羽ばたかせ、知性と創造の技を駆使して誰もまだ踏み入れたことの無ない構造の領域に至ろうとする。
バーナーの炎が揺らめき、溶解と冷却を繰り返すうちにあの小さな玉の中に世界が生まれる。時間が流れはじめる。そうして手の平の上に美が生じる。
小ささゆえに目を凝らす。意識を集中する。するとそんなものが見えはじめるのだ。
「大昔ガラスはとても貴重なもので、祭祀などでそれを玉にしたものが使われていたことがあるんですけれど、もしかしたらガラスの玉の形というのは、人間の魂を象徴したものだったのかもしれないなあなんて思うことがあるんですよ」

玉と魂(たま)。
なるほどそう言われてみればそうか。
透明で硬質で気高く、しかし脆い。
金属でも木でもなくガラスが選ばれたことの意味は、
そんなところにあるのかもしれない。
とんぼの目玉に似ているところから名づけられたらしいその玉は、小さくころっとしていてとても可愛い。きれいだ。
それが魅力のひとつでもある。
だが目を近づけていくと、
そこに思ってもみなかった何かが現れる。

さざ波のように揺れ動くもの。花火のように飛び散るもの。白い霧の奥に見え隠れするもの。
日によって、光の具合によってそれは変化していくだろう。さらにはあなたの心のありようによっても・・・。
写真ではその魅力は十分に伝わらない。機会があれば、ぜひ実物を手に取ってじっくりと見てほしい。

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