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和楽舎 レトロ家具&世界の雑貨



時を受け渡していくという仕事。

和楽舎 レトロ家具&世界の雑貨
辰巳雄一

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歌姫街道に
面白き店を発見。


「もったいない」という言葉について考えている。
この言葉は、限られた資源を大切にしましょうというような
理性に訴えるものではなくて、感性の、
いや生理のレベルのことのような気がする。
物を粗末に扱うと、ぱしっと手を叩かれ
「もったいないこと、すな!」と親から叱られることによって
身体に刷り込まれていく、そのような類のことのように。
だから親がもったいないとも何とも思わないようになれば、
この言葉が廃れていくのも道理であり、
いろんな物たちが打ち捨てられていくのも仕方がないことのように思える。

だがここに一人、そんなご時勢を「実にもったいない」と見ている男がいる。
辰巳雄一、三十五歳。和楽舎のオーナー、その人である。
和楽舎では古い家具とか雑貨を扱っている。
というと古道具屋さんというふうにジャンル分けしたくなるけれど、辰巳さんの意識の中では、それがちょっと違う。
使わなくなった人から、これから使う人へ橋渡しをする。
古くなって捨てられそうな物に、少し手を加えて、まだまだ使えるようにする。
もったいないからである。
古い物がどんどん消えていき、新しい物だけが我がもの顔とい
                              うことに違和感があるからでもある。

時間の厚みを、
感じてみなさい。


昔から古い物が好きだったわけではない。
家具に対して特別な思いがあったということもない。
何かの拍子に古い家具に出会い、
それを仕事にするようになった。
そうこうしているうちに、古いものの不思議な
魅力に感じいるようになった。
そういうことだったらしい。
不思議な魅力?
「古いものは作りがしっかりとしていて、使い込まれた味って言うんですか、
そういうものを感じるんですよね。
ただそれを鑑賞の対象にするんじゃなくて、今でも使える道具として日常の中に置く。
そうすると生活の奥行きが少し深くなるような気がするんですよ」
別に古いからといって特別視する必要はない。
ホームセンターで買うのと同じような感じで買ってもらっていい。
価格もできるだけ抑えてある。だけど新品のものにはない何かを感じることができる。
そこがいい。

新しいものがあったり、ちょっと前のものがあったり、
随分と昔のものがあったり。
生活の中に様々な時間の履歴を持つものがあることで、
暮らしの厚みが増してくる。
何世代もの家族が共に暮しているような、わずらわしさはあるけれど、懐かしさと親しみと暖かさはたっぷりとある。
そういった暮らしだ。
今ではそんな生活を望むべくもないが、ひとつ、ふたつと古いものを生活に取り込むことで、新しいものばかりの生活とは少し違う日常が生まれてきたりする。
辰巳さんはそう語る。

人がいて、物があり、
時はふり積もり、熟していく。


「別に僕が感性豊かな人間だから、そんなふうに感じるってことでもないと思うんですよね。皆さんもどこかでそんなこと感じてるんじゃないですか」
たしかに並んでいる家具たちを見ていると、懐かしさというのか、親しみというのか、暖かさというのか、ふつう物には感じない何かを感じる。
時間のなかでたっぷり過ごすと、人も物もどこか似たものになっていくのかもしれないなどと、ふと思ったりする。
真夏の晴天時に取材した。
三十五度は越えるかと思える気温の中で辰巳さんはニス塗りに精を出していた。
「たまらないですよねえ、この暑さ。それにニス塗りってすごく手間がかかって、
汗がぽとりと板面についただけで、一から塗りなおしってこともあるんですよ」
シンナーの臭いにむせながら、ひと刷毛ひと刷毛ていねいに塗っていく。
照りつける太陽の下、時折タオルで汗を拭い、長い髪をかきあげる。

元が古いものだから、そこまでやらなくても、と傍観者はつい思ってしまう。それに作業工賃を上乗せすることも
ままならないだろうし。
もしかしたら工作好き?とたずねたら苦笑いが返ってきた。
そうでもないようなのだ。
「ちゃんと使えるものにしたいですもんね」
そう言った。そうすれば欲しいという人が現れるかもしれない。
だからひとつひとつ歪みを直し、釘を打ち、ニスを塗る。面倒だけど手を抜かない。
そうすることで、「時」はある人からある人に受け渡されて、もうひとつの時間を刻みはじめるようになる。
                              「そう思いません?」と辰巳さんがこちらを見た。
                              さっきから日陰に避難したままの記者だったが、それでも深く頷
                              き返した。

店オープン日金・土・日
営業時間土・日 10:00〜19:000  金 13:00〜19:00
住所奈良市歌姫町1025 (地図) 駐車場あり
電話番号0742-31-3451
ホームページ(Web Shop)http://www.warakusha.jp/
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