TOPお店とか人物の取材記事農産物直売所 八色にぎわい市場 

農産物直売所 八色にぎわい市場



食べることを大切にする人が、増えてますよね。

農産物直売所 八色にぎわい市場
杉本千枝

rune2


片方にすこぶる美味しくて体にもよい野菜を作ろうと志す人がいて、もう片方に新鮮でおいしい野菜を食べたいと思っている人がいる。
「そんなそれぞれの思いを繋ぐのが私たちの役目だと思っています。まだまだ道半ばですけどねえ・・・」と八色にぎわい市場の社長である杉本千枝さんは言った。
フランスで、あるマルシェを覗いたときの印象が杉本さんの頭の中に焼き付いている。
野菜や果物やパンやチーズがどっさりと並んだ屋台の向こうから、丸々と太ったおばさんやおじさんがハイ、マダムと気軽に声をかけてくる。
どう、試してみなよ、すっごくうまいから。請け合うよ。
器用に果物の皮をむいて、そのひとかけらを差し出しながら笑いかけてくる。
まるでいつも買い物に来る顔見知りみたいに。

確かに美味しかった。言うだけのことはあると思った。
だがそれ以上にそのやり取りが心に残った。
自分が育てた作物に対する自信と、それでいて押しつけがましくない売り文句。
試食しているときに見せる優しい眼差しと、ふっとよぎる不安の影。
この東洋人に、この美味しさがわかるだろうか。にこっと笑ってみせると、それ以上の笑顔が返ってきた。
ひとつでいいのに、ふたつもみっつも買ってしまう。でもそれでいい。
その果物を買ったのは、ただ美味しかったからだけではなくて、そんなことの全てが素敵だと思えたからだ。
「またね」。もう会うこともないだろうに、そんな挨拶を交わしてその場をあとにした。
ああ、こんな場所が私の国にも欲しい。そう思ったそうである。


「私のお料理の半分以上は、ほら、昔あったでしょう、いちば、ね、市場、知ってます?そこで教えてもらったようなもんです」
料理の仕方とか、物の良し悪しの見分け方とか、旬の話とか、もちろんお値段の話とか、そんな会話がいつも弾んでいた昔の市場のことを思い出しながら杉本さんが言った。
マルシェといい市場のことといい、ただ物とお金が行き来するだけでなく、野菜や果物などの農産物を間に置いて人と人とが会話を交わし、気持ちのやり取りをするようなことがとてもお気に入りのようだ。
ここをそういう場所にしたい。そう杉本さんは思う。
作る人たちが丹精込めたものを、まず自分たちが最初のお客として味わって、その時に思ったこと、感じたことを伝えていく。
だから賢げなセールストークなんて必要ない。自分で料理して食べたときの、その感じをお客さんに伝えればいい。そういうふうに女性スタッフに語っている。

「実感から出た言葉でないと、お客さんには伝わっていかないものね」
ここではマルシェのように作った人がお客と直接対話する機会はあまりない。だからこそ託された者として彼らの思いを精いっぱい伝えていく。
それに加えて自分たちの言葉も添える。
別に食の伝道者として振る舞いたいわけではないけれど、商売の基本というのは、本当はその辺にあるんじゃないかと思っている。


「食」という字は、「人」に「良」と書くんですよね、と杉本さんが言った。
美味しくて体にもいい野菜を食べようと思うなら、まずは鮮度なのだという。
今朝収穫した野菜が、今ここに並んでいる。これが産直市場ならではの部分だ。
だがそれだけではどこの産直市場でも変わりはない。
わざわざ来てくれる人、たびたび来てくれる人を増やしていくためには、さらに八色にぎわい市場ならではの部分を作っていかなければならない。

あのマルシェのような、あるいは昔あった市場のような・・・。
それがヒントなのだろうけれど、まだまだ道半ばだそうだ。
だが考えようによっては、長い道のりの半分は過ぎたのだから、残されたのはあと半分。
さてそれがどれだけの長さを残しているのかはわからないけれど、人に良い食べ物を提供するために、杉本さん以下全スタッフは今日も忙しく立ち働いている。

(補足情報)
八色にぎわい市場は平成27年1月31日をもってひとまず閉店することになりました。
お客様には長い間ご愛顧を賜り、心より篤くお礼申し上げます。
なお、閉店後は暫くのお時間を頂き、以前から温めて参りました、
地域内外の皆様方に気軽にお立ち寄りいただける憩の場を、
新緑の頃にオープンを予定しております。
これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。

平成27年1月吉日
八色にぎわい市場 

(上記の公式文章に加えて、新たにオーナー自身からのメッセージも届きました。)
長らくの御来店へのお礼
「閉店に際して、お客様、農家様からの心温まる言葉、励ましを頂いて嬉しく思っています。
初夏の頃に「体にやさしい」を大切に皆様に喜んで頂けるお店をオープンさせたいと思っています。
どうぞご期待ください」

有限会社千杉
杉本千枝
営業時間
定休日
住所
電話番号
ホームページ
このページのトップへ

メニュー

サイト開設以来の総訪問人数

 人

総アクセス数

アクセス