ブ―ランジュリー フルール Vol.2 Vol.1  イチオシ!

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パン屋の実力は、食パンを食べてみると分かる。
シンプルなものほど、誤魔化しがきかないから。

ブーランジュリー フルール
仲 宏晃

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ハードトーストという名の食パンがある。
うまいんだ、これが。


一年365日、
もしかしたらご飯以上に毎日食べているかもしれない
食パンなのだが、そんなに食べているものなのに、
その味そのものについてはあまり意識したことがなかった。
あまりに舌になじみ過ぎていて味をどうこう言うものでは
ないような気がしていた。
それはご飯にも言えることで、それだからこそ
この歳になるまで飽きずに食べてきたのだろうと思っていた。

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ところがフルールのハードトーストという名の食パンを
食べてみて、そんな意識ががらりと変わってしまった。
うまいと、思ったのだ。
味、香り、それに歯ごたえ。全てにあれっと思わされた。
寿司がうまいとか、ビフテキがうまいとか
というのとは違う。
そんな色彩のある味ではなくて、単彩のうまさ。
舌を躍らせはしないが、しっくりと馴染んでくるような
うまさがあった。
それ以来、週に一度はフルールのハードトーストを
買いに行くようになった。どんなにうまい寿司でもビフテキでも、
週に一度の割合で食べたりするとさすがに飽きがきてしまうものだが、
このパンにはそれがない。そういったうまさなのだ。
50年以上を迂闊に過ごしてきた記者だけの体験だったかもしれない。
しかしそれは十分に驚き感じいるものだった。

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美味しさの秘密を求めて、
早朝取材を敢行したのだった。


午前4時30分。
朝はまだ遠く、静かで、かなり寒い。
いまだ眠りこけている家々の中に
一軒だけ明かりが付いている。フルールの明かりだ。
パン屋さんの朝は、すこぶる早い。
この店のオーナーであり、パン職人でもある仲さんが、
重そうな小麦粉の袋の中身を捏ね機の中にあけている。
スイッチを入れるとゆっくりと低い音を立てて機械が回りはじめた。

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飽きのこないうまさの秘密を求めて
パン作りの一部始終を取材しようと、
柄にもなく早起きして駆けつけてきたのだが、
仲さんのやることは、混ぜて捏ねて、発酵させて
焼き上げる、という極めて当たり前のことだけ。
秘伝の妙薬を一滴垂らすわけでも、
怪しげなおまじないをかけるというわけでもなかった。
記者の好むハードトーストは、
フランスパン系の食パンである。
ふつうパンには牛乳やバター、卵など味付けに一役かう
材料が使われているが、フランスパンにはそれらの素材は使われず、
小麦粉と水と塩とイーストだけで作られる。シンプルなのだ。
それゆえに味を左右するのは職人の腕だと言われている。
そんな分かったふうを記者が口にすると、仲さんは照れたように笑った。

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知る人ぞ知る。
ここが、その一軒。


パン生地そのものの美味しさを味わってほしい。
仲さんの思いもまたシンプルなのだ。
それが一番分かりやすいのが、
フランスパン系のパンたちということになる。
そう言われれば、この店の棚を占めている
フランスパン系の数は多い。
お馴染みのバゲットからはじまり、バタールにブール。
それにフランスパン生地をベースに一工夫を加えたパンたちがひとつのコーナーを形づくっている。

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10種類以上はある。
果実や胡桃、それに明太子入りなどもあって、
フランスパンの伝統にフルールのオリジナルな色彩を
ひと刷毛加えている。
フルールに行くなら、
まずはこれらのフランスパン系のパンを求めるべし。
僭越ながらそう申し上げておきたい。
他にも美味しいパンはたくさんあるけれど、
「フルールならでは」を味わうならそういうことになる。
朝の四時半から始めた取材は正午前に終わったのだが、
その間中、仲さんは的外れな質問に嫌な顔も見せずに答えながら、
手を動かし続けてひと時も休むことがなかった。
こちらの取材は終わっても、彼の仕事はまだ続く。それがほぼ毎日なのだ。
手間ひまをかけると簡単に言うけれど、こいつはかなりしんどいことだと、つくづく思った。

営業時間7:00〜18:00
定休日月曜日・第三火曜日
住所相楽郡精華町桜が丘3-14-5 (駐車場あります) (地図
電話番号0774-73-2929
ホームページhttp://www.fleur2004.com/
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