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人形作家 IWACO

rune10



奇妙で、不思議で、混沌としていて、でも、じんときて。
人形作家 アートスペース宙ノ手主宰
IWACO
(木津川市州見台)

fleur

その人形は眼をひん剥いていた。
よほど驚いたことがあったのか。それとも気が狂ったか、或いはそんなふうにして人を威嚇しているのか。
一枚のポストカードにその人形の写真があった。それを見つめながら、こちらも目をひん剥いていた。
なんじゃこりゃあ・・・。
まるで孫悟空が旅の途上で戦った妖怪変化のようだった。高熱にうなされた夢の中のイドの怪物のようでもあり、万華鏡の中に一瞬たち現れる色彩の悪魔のようでもある。
いずれにせよ危険だ。
だが人は近づいてはならぬものに魅き寄せられる。
実物を見たいと思った。それはすぐそばで手ぐすねを引いていた。

fleur

州見台、宙ノ手、方形のモダンな建物。
モルドールの炎の眼を頂くぎざぎざの山みたいな館を想像していたのだが、青い空の下に白く輝く、いたって健康的なそこは場所なのだった。 人形たちは無機質と言ってもいい実にシンプルなスペースの中にいた。 写真という平面の中に囚われていた人形たちが解放されて跳梁跋扈している。
近づいて見る。離れて見る。上から見る。下から見る。
右から見たり、左から見たり。あれも、それも、これもと見ているうちにふとある思いがきざしはじめていた。
欲しいと思ったのだ。それらの人形の、どれかひとつを。
老境に踏み入ってしまったおっさんが、お人形さんを欲しがっている。 なんとまあ・・・。

fleur

ひん剥かれた眼としか見えなかったものが、
何かを求めて大きく見開かれた眼に思えてくる。
見えるのか、見えないのか。
本当にあるのか、やはりないのか。
未来へ向けられているのか、
それとも遠い過去に視線をやっているのか。
いずれにせよ今はここにない何かを求めて見開かれた眼。
憧れているようであり、悔いているようであり、
思い出しているようでもある。
どこかで自分と折り重なる。だから愛おしくなるのか。
その人形を膝にのせてあやしていると、夢見の途中で異国異郷の、
或いは異界の物語を語って聞かせてくれそうな気がしてくる。

fleur

自分の中に何もないのなら絵を描くな、
物を作るな、歌を唄うな。
現代アートという便利なラベルを貼って何かを為した気になっているがらくたを見るにつけて、こんな憎まれ口をたたきたくなる。
一方でこれらの人形を作ったIWACOさんのおどろおどろしいまでの内なるエネルギーに拍手を送りたい。
だがそのエネルギーは気を許せば暴走し、のたうちまわる類のものではないか。それを統御し方向を与え、噴出する力に変えようとする試みの中で、何が生み出されてくるのか。
次がすごく楽しみである。

アートスペース宙ノ手 (人形作家IWACOこと岩井啓子さんが主宰)
営業時間 10:00〜16:00
定休日木・日・祝、毎月13・14・15日
住所京都府木津川市州見台7丁目1-7 (地図)  駐車場あり
電話番号0774-73-8500
ホームページsoranote.art (アドレスが変わりました)
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