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紅茶工房レジーナ



Tea for You. あなたとお茶を。

紅茶工房レジーナ 中村 光

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手際も鮮やかに
テイスティングは始まった。


紅茶のテイスティングしてみますかと言われた。
えっ、そんなことできるんですか?
紅茶工房レジーナのオーナー中村さんがお安い御用とでも言うように軽く頷いて店の奥に入っていった。
しばらくすると紅茶が注がれた三つの白いカップが並べられた。
左から「キャンディ」 「ダージリン」「ヌワラエリヤ」。それぞれ紅茶の産地の名前だ。見ると紅茶の色が三つともまるで違う。
ダージリンなどはよく知る紅茶の色というよりは、黄金(こがね)色に近い非常に薄い色をしている。

一口に紅茶といってもいくつかの種類があることぐらいは知っていた。
ダージリンは有名だ。ヌワラエリヤも名前だけは聞いたことがあった。キャンディは初耳だった。
飲んでみた。まるで違った。
紅茶の色の違いどころではなかった。
さてそれをどう表現すればいいのか。
試みようとして、そんな文豪でも難渋することにトライするのはすぐにやめた。無理。
ただすべからくぼんやりの記者の舌にも、それぞれの違いはくっきりとわかった。驚かされた。
この話、取材の時のことではない。取材に先立つずっと前のある日、一見の客として紅茶工房レジーナを初めて訪れた際のことだ。
「気に入ったものを買ってもらい、飲んで満足してもらいたいですから」
その時のことを話すと中村さんはそう言った。

年に一度は現地に赴き、
しっかり交渉するのだそうだ。。


紅茶工房レジーナは紅茶の専門店ではあるけれど、ティールームがあるわけではない。
茶葉の販売がメインの仕事だ。
ケーキ屋さんやカフェなどへの卸がほとんどだったが、三年前、今のところに新しく店を移し、個人への小売もはじめたそうだ。
近隣のカフェなどでここの紅茶を飲んで気に入ってくれた人たちが訪れてくれるようになった。
求められればテイスティングもしているのだという。
満足を売るといっても、手間のかかることだ。
「紅茶は嗜好品ですから、手間ひまを惜しんでしまうとお客さんに満足してもらえませんから」
だから年に一度、スリランカに紅茶を買い付けに行きもする。
現地に行かないと自分の思うような紅茶が手に入らないからだ。
彼の地はノープロブレムの文化。日本人ほどに味とか質にこだわらない。
あるとき現地任せにしたら、とんでもないのがやって来たこともあったのだとか。

「相手の目を見て、どの味が欲しいのか話します。アレでもない、ソレでもない、欲しいのはコレなんだとはっきりと伝えるんです」
アレもソレもコレも一緒じゃないかと相手は肩をすくめるけれど、イイヤぜんぜん違うのだと節は曲げない。
中東の人、文句言わずに、紅茶たくさんたくさん買ってくれる。日本人(You)、色々難題や注文をつける。だけどほんのちょびっとしか買ってくれない。
そんな嫌味を言われたこともありますよと、中村さんが苦笑した。
確かにビジネスなら中東の人との方がおいしい。だが一方で世界に冠たる紅茶を作っている職人ならば、それを正当かつ厳密に評価しようとする中村さんの熱意を嬉しく感じないわけもないだろう。
すったもんだの三年程が過ぎて、ようやくこちらの味の文化について理解してくれた。信頼も深まった。
それでもスリランカ詣では欠かさず続けている。毎年、茶葉の生育が違い、ばらつきがどうしても出る。
納得のいくものを取り寄せるためには、やはり自分の舌と鼻と目で確かめる必要があるからだ。
紅茶工房レジーナには様々な種類の紅茶が並んでいるのだが、そのそれぞれに目には見えないけれど中村さんの刻印が押されている。
茶葉を摘み、生産しているのは現地の人たちだが、それは同時に中村さんの厳しい目と繊細な舌が作り出した作品でもある。
この店が「紅茶工房」と名乗るゆえんもここにある。

熱々のお湯が、
しみじみとした幸せをもたらしてくれる。


「紅茶ってねえ、もっと気軽に楽しんで飲むものなんですよ」と中村さんが言った。
話の流れから、紅茶に対してもっと襟を正さなければならないのではと思い始めていたから意外な言葉だった。
「確かに提供する側には相当な見識も努力も必要ですが、飲む方はもっと気楽にやってもらっていいと思うんです。コーヒーなどに比べて高級なイメージがあるようですが、淹れ方も水道水を沸騰させてその熱々を注ぐだけですから、コーヒーを淹れるより簡単なんです。緑茶と比べても手軽なんじゃないかなあ」
沸騰させた熱いお湯、この100度のお湯で茶葉を景気よくポットの中で躍らせることが大事だそうだ。
「ティーポットをヤカンの側に持っていけ」。
本場イギリスでは子供たちにそう教えるのだという。

イギリス王室とか貴婦人だとか、邸宅でのアフタヌーンティーだとか、紅茶に対してこちらが勝手にイメージを膨らませ過ぎていたようなのだ。
「そんなイメージを払拭して、本来の手軽で美味しくて、それでいて時間がゆっくりと過ぎていくような感覚も楽しめる飲み物だということを知ってもらえれば、とても嬉しいですね」
ベルガモットのやわらかな香りがした。
「さあどうぞ」。
湯気のあがるアールグレイのカップがそっと差し出された。


<紅茶工房レジーナの紅茶が楽しめるお店をいくつかご紹介>
■mellow CAFE (奈良市小西町)
■ドイツ菓子 ゲベック (奈良市松陽台)
■ヴィラージュ川端 (生駒市小平尾町)
■Patisserie Nature Shiromoto (八幡市欽明台)
■ステラリュヌ (香芝市旭ヶ丘)
■ワイスバッハ (葛城郡広陵町)
■菓子工房 釜なりや (宇治市宇治)

営業時間11:00〜17:00 
定休日日・祝
住所奈良市学園南3-8-9   (地図) 駐車場あり
電話番号0742-52-4141
ホームページhttp://www.legina.jp
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