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鍼とお灸と吸い玉な日々

beguru

鍼とお灸と吸い玉な日々
第二回


クェーーーー!!!。
獲物を見つけたベロキラプトルが仲間を呼び集めるために上げた合図の声ではない。
吸い玉とやらの最初のひとつが記者の背中に吸い付いたとき、全身が打ち震え、その振動が頭頂部へ一点集中し、萎縮しはじめた脳の隙間で反響して発した声なき声であった。
ぱこん。あっ、また吸い付いた。
ぱこん。あっ、また。ぱこん。あっ・・・。ぱこん。おっ・・・。
ぱこん。いっ・・・。ぱこん。・・・・・・・。
その数、約二十個。それらが記者の背中に吸い付いておるわけです。
鍼とかお灸とかはほぼ想像の圏域に存在していたのだが、この吸い玉、これは想像だにしたことがなかった。
モロゾフのプリン、その透明容器の親戚筋みたいなものを想像していただきたい。
開いた方の口を背中にぴたっとくっつける。そしてポンプを使って中の空気を抜く。
すると気圧が下がり透明容器の中で背中の皮膚と肉がくにゅっと山形に盛り上がるのだ。
そうすることでいままで押さえ込まれていた血液やリンパやその他諸々の流れが促進される、
そういう原理であるらしい。
五分間ほどそのままの状態。
静かに流れているBGMを聴いて気を紛らそうとするが、背中に吸い付いた二十数個の吸い玉がじんじんと背中を攻め立てているような気がして、それは無理。
さてどんな姿を晒しているのかと想像しはじめて、きゃっと羞恥の声を上げたくなる。
「カメラがあれば取材用に撮ってあげますよ」と瀧川先生はおっしゃるわけだが、
二十数個の肉の小山を誰が見たいものか。へへへと笑ってごまかす。

それでは外していきまあす。
瀧川先生はのどかにそう言って、吸い玉を外しにかかる。
ぽこん、ぽこんと一つずつ外れていくたびに、ほへ、ほへと息がもれる。
すべてが外れて裸の背中が戻った。すーっと涼やかな風が撫でていくように感じられる。
びっくりされましたか、と瀧川先生が言う。
「吸い玉を嫌われる方もあるんですよ。痛いんじゃないかとか痕が残るんじゃないかと言われてね。
痛くはなかったでしょう?ねえ。引っ張られる感じはあるでしょうが、けして痛いというわけじゃない。
痕も最初は残ることもありますが、次第に薄くなっていきます。赤くなるのは血行が良くなっている証拠で、
自らの治癒能力が高まっているってことなんです」
吸い玉初体験の記者は、はあ、そういうもんですかと神妙だ。
だが確かにBeforeとAfterで背中あたりの様子がかなり違う。
硬く甲羅を張ったようになっていたわが背中は、叱咤されほぐされて、
柔らかく緩やかに波打っているようにさえ感じられる。
刻苦勉励の末にやってきた穏やかな休息というか、嵐が吹きすぎた後の晴天、
大活劇の後のエンドマークと言ってもいい。 つまりは緊張のあとの緩和というやつだ。
おかげで滞っていたものが流れはじめ、歪んでいたものが正されて、
あるべきものが、あるべきところで働きはじめる。
自らの力で自分の体調を正すためには、まずは大声であちらこちらを叩き起こさねばならないということなのだとしたら、吸い玉はかなり効果があると思えた。
丸くて赤い痣をいくつも背中に貼り付けて、記者はまだ施術ベッドの上だ。
初体験はまだ終わらない。次は鍼の出番だ。

(第三回へつづく)

取材先がくえんまえ鍼灸院 
施術時間9:00〜13:00  16:00〜21:00(木・日除く)
定休日火曜日・祝祭日
住所奈良市登美ヶ丘2-1-10-2(駐車場あります) (地図
電話番号0120-89-1715 0742-45-9345
ホームページhttp://www3.kcn.ne.jp/~takigawa/
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