ちかばねっと奈良・京都

蕎麦人に行くと思うと、
なぜか心は、そぞろになってしまう。

蕎麦というものは、人を構えさせる。
うどんに対して構える者は少ないだろう。
蕎麦はそこが違う。通がいる世界だ。
舌よりも、その上を転がる言葉が少しだけ優位な世界。
多くの人たちが蕎麦について語っているし、書いている。
「蕎麦人」その切れが良く、真っ向勝負な店名からも、
「かかって来なさい」という雰囲気を勝手に感じて
しまい、自ずとこちらの肩にも力がはいってしまう。
しかも店主、横山さんは大男だった。

蕎麦人で食べてみて、
初めてのことに驚いてしまう。

通を自認する者なら成程と頷くだろうが、通でもなんでも
ない者にとっては、おっ！といった感じだった
もちろん蕎麦のことである。蕎麦が歯を押し返す。
かたいわけではない。あえて言えば弾力性。腰があるとも
言うのだろうか。もちろん蕎麦はきんと冷え、
つゆは濃厚で、すごくこの蕎麦に合う。うまい。
だがそれ以上に、蕎麦のその食感が強く印象に残った。
そんなことに感心してしまう。

蕎麦人と話をして、
そういうことかと、頷いてしまう。

ラベル、レッテル、能書き。それをブランド力などと
呼んだりもするが、人はいま食しているその味よりも、
ついそんなものに左右されてしまう。
だが食べる時は、目と鼻と歯と舌で、つまりは五感で、
それのみで味わってほしい。難しいことではない。
いつも食卓でやっていること。蕎麦も一緒です。
そんなふうに横山さんは語る。ざるそば、８５０円。
まずはそこから肩の力を抜いて、五感全開でどうぞ。

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