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バイシクルのある日常

beguru

バイシクルのある日常
第四回


繰り返しになるけれど、スタンダードということについて再度。
スタンダードなものとは、そのものが本来備えているべきものを過不足なく備えているもののことを指すと前回書いた。
それ以上の品質や機能を求めれば高級品となり、その一部を省いたり、品質に手心を加えたりすれば安価な商品となる、そのような基準値となるような製品群でもある。
バイシクルカラーの丹さんによればクロスバイクTREK7.4FX¥72,000(税込)は自転車の、そのスタンダードということになる。

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ところで、そのものが本来備えているべきと書いたけれど、ここで言う「そのもの」とは一体どういったものを指すのだろう。
趣味のアイテムとして、その人の関心を十分以上に満たし、日常とは少し違った、より楽しく充実した時間を過ごせるもの。
「そのもの」とは、そういったもののことだろうか。
いや、そうではないと丹さんゆっくりと首を横に振った。
自転車という日常的に使う移動の道具として、本来備わっているべきものを満たした製品がクロスバイクTREK7.4FXなのだと、丹さんは言う。
日常的に使う移動の道具・・・?
でもねえと、思ってしまうのだ。
移動の道具としての自転車なら、一万円近辺でいくらでもあるだろう。
「ですが、それらはスタンダードな商品とは言えませんよね」と丹さんがやんわりと言う。
でもねえと、また反論したくなるのだ。
移動の道具として本来備えているべきものって、そんなにあるだろうか。
まっすぐ走り、曲がり、ちゃんと止まり、なにかの拍子にチェーンが外れたりすることがあまりなく、
走っているときに突然サドルが下がったりしない程度のことであれば十分なのではないだろうか。
それで用は足りる。
「それだけでは不十分だと思うんですよ」と丹さんがさらにやんわりと言う。
まず走り出すとき。
止まっているものを動かすには、それ相応の力がいるけれど、それでもいつもいつも「うんこらしょ」と力まなければならないのでは疲れてしまう。日常では走ったり止まったりが頻繁だ。移動の道具のスタンダードとしては、軽く踏み込めばすっと動くというふうでないといけない。
それから止まるとき。
整備されたサイクルロードではあまり考えなくてもいいが、生活道路では突然目の前に何が現れるかわからない。 転がったボールと、それを追う子供。信号はまあとりあえずは守っておくほうがいいものと考えている原チャリの兄ちゃん。 片方だけは熱心に確認するものの、もう一方を確認することを時折忘れてスーパーの駐車場から出てくるご婦人方。
そのような不意の出来事にも咄嗟に止まることのできるブレーキ性能が必要になる。
それともうひとつ重要なことがある。
車体の軽さである。
重いものを止めるには慣性の法則とやらのせいですごい力が必要になる。
だから少しでも軽ければ、より少ない力で物体の動きを止められるというわけだ。
自転車を持ち歩くわけではないから軽いかどうかなんてあまり考えたこともなかったが、この連載の第二回にも書いたけれど自転車の車重が1kg軽くなると、自分の体重が10kg軽くなったぐらいの性能効果があるのだという。軽いほうが動かしやすく止まりやすい。これもあの慣性の法則というのが働くせいなのだ。
軽くするだけなら簡単だ。プラスチックで自転車を作れば、世界一軽い自転車ができるだろう。だけどそんなのにまたがれば、すぐにへしゃげてしまう。走るとき、曲がるとき、止まるとき、思った以上の力が自転車にかかる。だから車体には軽さだけではなく、強度としなやかさも必要になってくる。
軽くて、強くて、しなやかな材質。
そんないいことづくめの材質となればやはり限られるし、よって材料費もそれなりにかかるということになる。丹さんが扱う自転車の価格のかなりの部分を、車体の材料費が占めているのもそのためだ。
頻繁にチェーンが外れたり、サドルが突然下がるなんてのは論外としても、移動の道具として日常的に使う自転車にこれほどの要件が必要だとは思ってもみなかった。
だがどれもこれも何かとても特別なことではなく、言われてみれば、はあー、そうですねと頷くことばかりなのだった。

(第五回へつづく)

取材先バイシクルカラー 
営業時間平日 12:00〜20:00   土・日・祝 11:00〜20:00
定休日水曜日(祝日の場合は翌日)
住所奈良市中登美ヶ丘6-3-7 リコラス登美ヶ丘B102 (駐車場あります) (地図
電話番号0742-52-8118
ホームページhttp://bicyclecolor.com
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